2017年10月18日

今週は大阪市立大学で集中講義.合間に科研費書類書いていますが…….クラスファイルをjlreqにするか悩み中(どうでもいい).ぞうの卵はおいしいぞう.

2017年10月15日

最後に次を示す.

有限体上の代数的な斜体は可換である.

$k$を標数$p$の有限体,$D$をその上の代数的な斜体,$C$を$D$の中心とし,$C\ne D$と仮定する.$x\in D\setminus C$をとる.$x$は代数的であるので$k(x)$は$k$上の有限次拡大,特に巡回拡大.よって$C(x)/C = Ck(x)/C$も巡回拡大である.$\sigma$を$\mathop{\mathrm{Gal}}(C(x)/C)$の生成元とすると,$\sigma\colon C(x)\to C(x)$は以下の定理により$D$上の内部自己同型にのびる,つまりある$y\in D$により$\sigma(x) = yxy^{-1}$となる.適当な$p$の冪$q$により$\sigma(x) = x^{q}$であるので,$yxy^{-1} = x^{q}$.これと$x,y$が代数的であることから,$k(x,y)$は$k$上有限次元であり,従って有限斜体.これは有限斜体が可換であることを主張するWedderburnの小定理に反する.

使った定理(よく知られている?)は以下の通り.(Skolem-Noetherっぽいだけと有限性の仮定が一見弱い.証明は同じ.)$k = C$として使う.

$D$を$k$上の斜体とし,$D$の中心は$k$であるとする.$A\subset D$を$k$上の有限次元部分斜体とすると,$A$の任意の自己同型は$D$の内部自己同形に伸びる.

$A,D,k$を定理の通りとし,ベクトル空間$A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$($D^\mathrm{op}$は$D$の反転環)に積を$(a_1\otimes d_1)(a_2\otimes d_2) = a_1a_2\otimes d_1d_2$と入れる.次の補題は後で示す.

既約$A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$加群はすべて同型.

自己同型$\varphi\colon A\to A$に対して,$A\otimes_kD^{\mathrm{op}}$加群$V_1,V_2$を次で定める.加法群としては$V_1 = V_2 = D$であり,$a\otimes d\in A\otimes D^{\mathrm{op}}$に対して,$v\in V_1$ならば$(a\otimes d,v)\mapsto avd$,$v\in V_2$ならば$(a\otimes d,v)\mapsto \varphi(a)vd$として$A\otimes_kD^{\mathrm{op}}$加群の構造を定める.$1\otimes_k D^{\mathrm{op}}\subset A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$に制限して考えれば$V_1,V_2$は既約であるので,$A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$加群としても既約.よって補題から$V_1\simeq V_2$である.同型$f\colon V_1\to V_2$をとり,$b = f(1) \in V_2 = D$とおくと,$v\in V_1$に対して$f(v) = f(1\times v) = f(1)v = bv$である.また$A$線形であることから,$a\in A$に対して$\varphi(a)b = \varphi(a)f(1) = f(a) = ba$.よって$\varphi(a) = bab^{-1}$となり定理が示された.

最後に補題3を示す.先に次を示しておく.

$A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$は単純環,つまり非自明な両側イデアルを持たない.

$I\subset A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$を$0$でない両側イデアルとし,$0$でない$x = a_1\otimes d_1 + \cdots + a_n\otimes d_n\in I$をとる.ただし$a_1,\ldots,a_n$は$k$上一次独立で,$n$はこのような中で最小(特にすべての$i$で$d_i\ne 0$)なものとしておく.$1\otimes d_1^{-1}$をかけることで,$d_1 = 1$としてよい.$d\in D^{\mathrm{op}}$に対して \[(1\otimes d)x - x(1\otimes d) = a_2\otimes (dd_2 - d_2d) + \cdots + a_n\otimes (dd_n - d_nd)\] であり,これは$I$の元.よって$n$の最小性から$dd_i = d_id$がすべての$i = 2,\ldots,n$と$d\in D^{\mathrm{op}}$に対して成り立つ.従って各$d_i$は$D^{\mathrm{op}}$の中心,すなわち$k$の元である.$a = d_1a_1 + \cdots + a_nd_n$とおけば$x = a\otimes 1$.よって$1\otimes 1 = (a^{-1}\otimes 1)x\in I$.従って$I = A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$である.

補題3を示す*1.$B = A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$とおき,$I\subset B$を既約な左$B$加群とする*2.$IB\subset B$は両側イデアルであるから,補題4から$IB = B$.よって$B = \sum_{b\in B}Ib$となる.$b\in B$に対して,$x\mapsto xb$は全射準同形$I\to Ib$を与える.$I$は既約であるので核は$I$全体か$0$であり,それに従って$Ib = 0$または$Ib\simeq I$である.つまり$B$は$I$と同型な既約部分加群の和としてかける.よって$B$は左$B$加群として半単純で,また(半単純加群のよく知られた性質により)左$B$加群として$B \simeq I^n$となる.($n\in \mathbb{Z}_{>0}$.$n$が有限であることは$D^{\mathrm{op}}$上の次元から従う.)任意の既約$B$加群は$B$の商であるので,これは$I$に同型となる.

*1
$D^{\mathrm{op}}$上有限次元なことから$A\otimes_k D^{\mathrm{op}}$はArtinな単純環なのでそれから従うが,一応証明をしておく.
*2
$D^{\mathrm{op}}$上の次元が最小なものをとればよい.

2017年10月14日

$A$を$k$代数,$M$を単純左$A$加群,$D = \mathop{\mathrm{End}}_A(M)$とおく.$M$は自然に$D$加群である.次を示すのだった.

$A$は代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないとする.このとき単純左$A$加群$M$は$D = \mathop{\mathrm{End}}_A(M)$上一次元である.

次の性質は結構有名.

$A$の$\mathop{\mathrm{End}}_D(M)$における像は次の意味で稠密である:$x_1,\ldots,x_r\in M$,$f\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$とすると,ある$a\in A$が存在して$ax_1 = f(x_1),\ldots,ax_r = f(x_r)$が成り立つ.

$x = (x_1,\ldots,x_r)\in M^{\oplus r}$とおく.$M^{\oplus r}$は半単純であるので,$Ax\subset M^{\oplus r}$は直和因子.$p\colon M^{\oplus r}\to Ax$を射影とすると,$p$は$A$と可換なので$p\in D$であり,射影の定義から$Ax = \{y\in M^{\oplus r}\mid py = y\}$.$p\in D$であるから$f\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$に対して$f$と$p$は可換なので,$Ax$は$f$で保たれる.特に$f(x) = ax$となる$a\in A$が存在し,これが補題の$a$を与える.

もし$M$が$D$上有限次元ならば,$x_1,\ldots,x_r$を基底にとればこれは$A\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$が全射であることを示している.より一般に,有限次元部分$D$ベクトル空間$M'\subset M$に対して,$A' = \{a\in A\mid a(M')\subset M'\}$とおく.$x_1,\ldots,x_r\in M'$を基底とし,$f\in \mathop{\mathrm{End}}_{D}(M')$に対して,それを延長して$F\in \mathop{\mathrm{End}}_D(M)$をとる.補題からある$a\in A$が存在し$F(x_1) = ax_1,\ldots,F(x_r) = ax_r$が成り立つが,$F(x_i) = f(x_i)$より$f(x_i) = ax_i$.特に$ax_i\in M'$であるので$a\in A'$で,$M'$上の線形写像として$a = f$.つまり$A'\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M')$は全射である.

さて,次に注意する.

$A$が代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないとする.このとき$A$の部分代数および商代数も代数的かつ$0$以外の冪零元を持たない.

部分代数が代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないことは明らか.また商代数が代数的となることも明らかである.よって商代数が$0$以外の冪零元を持たないことを示せばよい.$f\colon A\to B$を全射準同形とする.$b \in B$が冪零であるとし,$f(a) = b$となる$a\in A$をとる.

$a$は代数的であるので,ある多項式$\varphi$により$\varphi(a) = 0$となる.$\varphi$をこのような多項式の中で次数が最小のものとする.$\varphi(X)$を$\varphi(X) = \psi(X)X^s$,($s\in\mathbb{Z}_{\ge 0}$,$\psi(0)\ne 0$)と分解する.$s > 1$とし,$y = \psi(a)a$とおくと,$\varphi$の次数の最小性から$y\ne 0$であるが,$y^s = \psi(a)^sa^s = 0$となり$y$は$0$でない冪零元となる.これは$A$に関する仮定に反する.従って$s\le 1$であり,特に$\psi(a)a = 0$.

$\psi(a)a = 0$より$\psi(b)b = f(\psi(a)a) = 0$である.一方$b$は冪零であるので,$b^r = 0$となる$r\in\mathbb{Z}_{>0}$が存在する.$X$に関する多項式$\psi(X)X$と$X^r$の最大公約式は$X$であるので,これより$b = 0$となる.

目的の補題を示そう.$M'\subset M$を$D$上有限次元のベクトル空間とする.すると$A$の部分環$A'$と全射$A'\to \mathop{\mathrm{End}}_D(M')$があるのだった.$A$が代数的かつ冪零元を持たないことから,上の補題により$\mathop{\mathrm{End}}_D(M')$も冪零元を持たない.しかし$\dim_{D}(M') > 1$ならば$\mathop{\mathrm{End}}_D(M')$は冪零元を持つことが(簡単な行列計算により)わかるので,$\dim_D(M')\le 1$.$M'\subset M$は任意の有限次元ベクトル空間だったので,$\dim_D(M)\le 1$でなければならない.

2017年10月13日

なんとなく証明がわかってきた気がするので書いてみる.ちなみに証明はN. Jacobson, Structure theory for algebraic algebras of bounded degree, Ann. of Math., Vol. 46, No.4, 1945にある.みやたにくんに教えてもらいました.

定理は次の通り.以下ずっと$A$を環とする.

任意の$x\in A$に対して$x^{n(x)} = x$となる$n(x)\in\mathbb{Z}_{>1}$が存在するならば,$A$は可換.

まず簡単な帰着をする.$A$は定理の条件を満たすとし,$n$を$A$の標数($\mathrm{Ker}(\mathbb{Z}\to A)$の生成元)とする.$x\in \mathbb{Z}$に対して$x^{n(x)} - x\in\mathbb{Z}$は$A$内で$0$なので$\mathbb{Z}\to A$は単射ではなく,よって$n \ne 0$.また任意の素数$p$に対して$A$内で$p^{n(p)} - p = 0$であるから$n$は$p^{n(p)} - p$の約数.$p^{n(p)} - p$は$p$で一回しか割れないことから,$n$も$p$で一回しか割れない.$p$は任意の素数であるので,$n$は互いに異なる素数の積である.$n$を割る素数を$p_1,\ldots,p_r$とすると,$n = p_1\cdots p_r$.$A$は$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\simeq \mathbb{Z}/p_1\mathbb{Z}\times\cdots\times \mathbb{Z}/p_r\mathbb{Z}$上の代数であり,従って$\mathbb{Z}/p_i\mathbb{Z}$代数$A_i$により$A = A_1\times \cdots\times A_r$と分解する*1.$A$を$A_i$に変えることで,最初から$A$はある素数$p$に対して$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$代数であるとしてよい.

以下$k$を体とし$A$は$k$代数であるとする.定義を一つ与える.

$A$が($k$上)代数的であるとは,任意の$a\in A$が代数的,つまりある$0$でない$k$係数多項式$f(X)$が存在し$f(a) = 0$となることである.

定理1の条件を満たす$A$は明らかに代数的である.さらに$0$以外の冪零元を持たないことにも注意する.定理1は次の二つから導かれる.

$A$が代数的かつ$0$以外の冪零元を持たないならば,$A$は$k$上の斜体の(一般には無限個の)直積に埋め込まれる.

有限体上の代数的な斜体は可換である.

次の事実から始める.

$J\subset A$をJacobson根基とする.$A$が代数的ならば,$A$の任意の元は冪零である.

$x\in J$とする.$A$は代数的であるので,ある$a_n,a_{n - 1},\ldots,a_r\in k$,$a_n,a_r\ne 0$により \[ a_nx^n + a_{n - 1}x^{n - 1} + \cdots + a_rx^r = 0 \] となる.$y = a_r^{-1}(a_nx^{n - r - 1} + a_{n - 1}x^{n - r - 2} + \cdots + a_{r + 1})$と置くと,$a_r(yx + 1)x^r = 0$.Jacobson根基の特徴付けの一つにより,$J = \{a\in A\mid 1 + AaA\subset A^\times\}$であるので,$yx + 1$は可逆.よって$x^r = 0$である.

Jacobson根基のもう一つの特徴付けにより,$J = \bigcap I$($I$は$A$の左極大イデアル全体を走る)である.よって自然な射 \[ A\to \prod_I \mathrm{End}_k(A/I)\] の核は$J$と一致.特に$A$が代数的かつ冪零元を持たなければ補題5から$J = 0$であるので,この写像は単射である.$I$の極大性から$A/I$は単純左$A$加群,$D_I =\mathop{\mathrm{End}}_A(A/I)$とおくと,Schurの補題*2から$D_I$は斜体であり,また$A$の像は$\mathop{\mathrm{End}}_{D_I}(A/I)$に含まれる.よって,$A$が代数的かつ冪零元を持たないならば埋め込み \[A\hookrightarrow \prod_M \mathop{\mathrm{End}}_{D_I}(A/I)\] を得る.$D_I$は斜体であるので,$D_I$加群はすべて自由であり,基底の濃度の一意性が成り立つことに注意する.

定理3のためには次を示せばよい.

$A$は代数的かつ冪零元を持たないとする.単純左$A$加群$M$は$D =\mathop{\mathrm{End}}_A(M)$上一次元である.

続きは後で.

*1
$(0,\ldots,0,1,0,\ldots,0)\in \mathbb{Z}/p_1\mathbb{Z}\times\cdots\times \mathbb{Z}/p_r\mathbb{Z}$($i$番目のみが$1$)に対応する$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$の元を$e_i$とし,$A_i = e_iA$とおくと,$a\mapsto (ae_1,\ldots,ae_r)$により定義される$A\to A_1\times \cdots \times A_r$が同型を与える.逆は$(a_1,\ldots,a_r)\mapsto a_1 + \cdots + a_r$.
*2
任意の環$A$の既約$A$加群$M$に対して$\mathop{\mathrm{End}}_A(M)$は斜体.証明は次の通り.$f\in \mathop{\mathrm{End}}_A(M)$が$0$でないとすると$f$の核は$M$の全体でない部分$A$加群で,よって$M$の既約性から$0$となる.従って$f$は単射.同様に$f$の像を考えれば$f$は全射にもなる.

2017年10月12日

京都に来ている.午前中が超平面配置セッションになっていた.普段は聞かないような話で面白い.昨日の授業が終わってから来たので今日と明日だけ.

2017年10月11日

数学科の授業.元気な学生さんが多く,終わってからも結構質問が出る.やはり反応があると楽しい.

2017年10月10日

任意の$x$が$x^2 = x$を満たすならば可換,ってのはよく知られている.まず$(x + y)^2 = x + y$と$x^2 = x$,$y^2 = y$から$xy + yx = 0$を導き,それと$x = 2$とおいて出てくる$2 = 0$から従う.ほかの先生が,これを演習に出したらしいのだが,その後学生さんたちが「じゃぁ$x^3 = x$ならばどうだろう」と考えて,最終的に$2xy = 2yx$が出ることを導いたらしい.

んじゃぁ$x^n = x$ならば$(n - 1)xy = (n - 1)yx$なのだろうかとググってみたら,そもそも任意の$x$が$x^3 = x$を満たすならば実は可換らしい.というか,より「強く任意の$x$に対してある$n(x)>1$が存在して$x^{n(x)} = x$」という条件から可換性が出るらしい.証明はまだ読んでいないのですが…….これこれならば可換って定理いっぱいあるなぁ.